マーケティングオートメーション(MA)導入で失敗する原因と対策法について解説
2025.6.12本記事では、MA導入時の失敗事例とその克服方法を解説し、成功へのステップを丁寧にご紹介します。
目次
マーケティングオートメーションとは?
マーケティングオートメーションの失敗を理解するうえでは、まずMAの基本を把握しておく必要があります。MAは、見込み顧客の情報収集やスコアリング、メール配信、フォーム管理、ランディングページの作成などを総合的に行うことです。
これにより、顧客がサイト内で辿る行動を可視化し、最適なタイミングで適切なメッセージを届けることを可能にします。さらに、成果指標となる開封率やクリック率、コンバージョンなどを一元的にトラッキングできるため、PDCAサイクルを効率よく回せる点もMAの魅力です。
ただし、この便利な仕組みをフル活用するには、導入目的の明確化や社内リソースの確保、そして継続的なコンテンツの拡充が不可欠となります。単にツールを導入しただけでは、自動的に売上や問い合わせが増えるわけではありません。
失敗例①目的・目標が明確でないまま導入

マーケティングオートメーションを始める上で最初に決めておきたいのが目的と目標です。これが不明確な状態でツールを導入すると思わぬ失敗を招くこともあります。導入時に必要な意思決定はKGI・KPIの設定や運用スコープの明確化など多岐にわたり、これらを固めずにスタートすると現場の混乱を引き起こします。
原因:導入後に何を測定すべきか迷う
マーケティングオートメーション失敗で最も多いのが、明確な目標設定をしないまま導入してしまうケースです。「MAを使えば自動化できる」「なんとなく売上が上がりそう」という曖昧な期待感だけでスタートすると、運用が始まった途端に「何を最終ゴールとするのか」が見えなくなります。
結果的に担当者は日々の作業に追われ、KPIの変化も正しく追えず、ツールの有効性を測定できないという悪循環に陥りやすいのです。
対策:KGI・KPIを事前に設定し、社内で共有する
この失敗を避けるには、導入前にKGI(最終目標)とKPI(中間指標)を具体的な数値で定義することが不可欠です。たとえば「半年以内にリード数を月間500件増やす」「メール開封率を30%向上させる」など、誰が見てもわかる形で目標を掲げます。
さらに、部署を越えてこの目標を共有し、進捗を定期的に可視化できる仕組みを作っておくことが重要です。目標が明確になれば、運用初期に何を優先すべきかも判断しやすくなるでしょう。
失敗例②保有リードが少なくスコアリングできない
リードの母数が十分でない場合、スコアリングの設定自体が困難になりマーケティングオートメーションの強みを活かせません。分析の元となるデータが極端に少ないと、施策の正確性も担保できず、戦略全体がブレてしまいます。特に新規アプローチを強めたい企業ほど母数不足に苦戦するケースが多いです。その原因と対策を見ていきます。
原因:母数不足で分析の精度が上がらない
MAの主な機能であるスコアリングやナーチャリングを実践するには、ある程度のリード数が必要です。しかし、まだ認知度が低い企業や新規事業などでは、そもそもリードの母数が圧倒的に少なく、分析ツールを回しても十分なサンプルが得られない状態に陥りがちです。
結果的に、「スコアの偏りが激しい」「A/Bテストの有意差が出ない」といった壁に直面し、MAの本質的な価値を引き出せません。
対策:リード獲得施策を強化し、母数を拡大する
この課題を解決するには、まずリード獲得(リードジェネレーション)施策を最優先で強化する必要があります。たとえばSEOやPPC広告、SNS広告など、集客チャネルを拡充して母数を着実に増やすのが先決です。
また、ホワイトペーパーやオンラインセミナー(ウェビナー)など、潜在顧客にとって魅力的なコンテンツを用意し、リード獲得の入り口を複数設ける工夫も効果的です。ある程度まとまった数のリードが蓄積されれば、スコアリングアルゴリズムの精度が上がり、MAが本来持っている自動化機能の恩恵を受けやすくなります。
失敗例③Webサイトやコンテンツが不足している

MAを活用する場合、オートメーション機能だけでは効果を出しにくいです。実際にユーザーへ提供するウェブコンテンツが不十分だとシナリオ設定も活かせません。情報が少ないとリードの興味を継続させる施策が成立せず、せっかくのアクションを逃す可能性も出てきます。ここでのポイントを抑えながら成功へ導く秘訣を明らかにします。
原因:シナリオが組めても送るネタがない
マーケティングオートメーション失敗の一因として見逃せないのが、コンテンツ不足です。MAでは、顧客の興味度合いや行動に応じて適切な情報を送るシナリオを構築しますが、その際に使えるブログ記事や事例集、ホワイトペーパーなどが揃っていないと、配信するメッセージの幅が限られ、すぐに行き詰まってしまいます。
どんなに高度な配信シナリオを組んでも「送るネタ」がなければ成果は出ません。
対策:ペルソナ別のコンテンツ企画と継続的な制作体制
これを防ぐには、まずターゲットとする顧客像(ペルソナ)を明確にし、各ステージ(認知→検討→比較→購入)に応じて必要となるコンテンツを逆算する方法がおすすめです。導入事例や業界の最新動向、製品マニュアル、成功事例のインタビューなど、多彩な形式の素材を用意することで、顧客の興味度合いに合わせて最適な情報を提供しやすくなります。
また、外部委託に頼るだけではなく、社内にコンテンツチームを置き、定期的な記事更新や資料作成を進める体制づくりも重要です。
失敗例④機能が複雑・難解で使いこなせない
MAは多機能であるぶん、操作画面や設定項目が増えるので現場に戸惑が生じやすいです。特に初めてMAを導入する組織では、何から着手すべきか不明瞭なまま時間だけが過ぎる場合もあります。そのため開始直後の定着率が低く、ツール全体を敬遠する声も上がりがちです。
原因:操作画面が難しい、何から着手すべきかわからない
高度な機能を備えたMAツールは、設定項目やデータ分析の項目が多岐にわたるため、初期導入時に担当者が操作に戸惑うケースが後を絶ちません。「用語や画面構成が複雑で、どこをどう設定すればいいのか分からない」「ベンダーのヘルプページを見ても専門用語が多く、敷居が高い」という声はよく聞かれます。
結果として、メール配信など基本機能だけをかろうじて使いこなす状態に留まり、MAの真価を活かせないまま失敗に終わってしまうのです。
対策:最重要機能を優先し、サポート体制を活用する
この問題を解決するには、まず自社が重視する機能を明確にし、必要最小限の設定や操作を習得することが大切です。メール配信やスコアリングなど、最優先の機能にフォーカスして運用を始め、徐々に範囲を広げていくステップを踏むと、担当者の学習負荷を軽減できます。
加えて、ベンダーのカスタマーサクセスや導入支援プログラムを積極的に利用し、疑問点を気軽に相談できる関係を築くことも成功へのポイントとなります。機能が多いほど活用の幅は広がりますが、焦らず段階的に習熟する姿勢が失敗回避には欠かせません。
失敗例⑤十分な人的リソースが確保できない
MAの運用はツールが自動化するぶん作業が減るイメージを抱かれがちですが、実際には人手が必要なポイントも多々あります。特にマーケティング部門と営業部門が協力する体制がないと成果は出づらくなります。各種コンテンツ作成や分析レポート、営業フォローなど担当が重複すると短期に運用がしぼんでしまうケースもあります。
MAの運用には想像以上に多くの作業がある
「マーケティングオートメーションで自動化できるから、人手はいらない」と考えるのは大きな誤解です。
確かに、メール送信やスコアリングなどの定型作業は効率化されますが、シナリオ設計やコンテンツ制作、KPIモニタリング、データ分析など、人間ならではの判断が求められる業務は依然として多数存在します。導入直後は特に設定やテスト運用が集中するため、担当者が一人しかいない企業だとキャパオーバーに陥りがちです。
対策:チーム編成と外部リソース活用で負担を分散
この失敗を回避するには、まずMA運用に必要な役割をリストアップし、社内で対応可能かどうかを判断することが重要です。マーケ担当者、コンテンツ作成担当、データ分析担当、営業連携担当といったように役割分担を明確化し、部署を超えたチームを編成するとスムーズに運用しやすくなります。
また、どうしても人手が足りない場合は、外部の制作会社やコンサルティングサービスを活用し、コンテンツ作成や設定の一部を委託するのも有効です。
失敗例⑥設計不備のままツールを導入してしまう
MAツールの選定や導入は営業部門とマーケティング部門が緊密に連携して行う必要があります。その絡みが不十分なまま導入を急ぐと運用フローが機能に合わず混乱するケースもみられます。営業サイドが何を欲しているか、マーケ側がどう生かしたいかをすり合わせずツール導入だけ行うと、後で大きなギャップが発生します。その流れを整理します。
原因:営業部門との連携や運用フローが曖昧
マーケティングオートメーション失敗において、意外と見落とされがちなのが営業部門との連携不足です。
MAで取得したリードをどのタイミングで営業に引き渡すのか、その後のフォローアップの責任範囲はどこまでかなど、明確な合意がないままシナリオを組んでも、実際に運用が走り出したときにチグハグな対応になりかねません。特にBtoBビジネスでは、MAによるナーチャリングと営業の商談活動をスムーズにつなげることが成果に直結します。
対策:運用要件定義の徹底と合意形成プロセス
導入前には、顧客が興味を示し始めた段階から商談化までのプロセスを可視化し、営業とマーケティングの両部門が納得する形で運用設計を行う必要があります。たとえば、リードスコアが一定値を超えたら営業アラートを発行し、一定期間応答がなければ再びマーケに戻すなど、シナリオを詳細に定めておくのが理想です。
さらに、運用開始後も定期的なミーティングを通じてフィードバックを交換し、運用フローを柔軟に修正するサイクルを回しましょう。このように設計段階から合意形成を重視することで、導入後の失敗リスクを大幅に減らすことができます。
マーケティングオートメーション(MA)導入で失敗しないために
以上の失敗例を参考すると、MA導入には綿密な事前設計やリソース配分がいかに重要か理解できます。単にツールの動作を覚えれば良いというわけではなく、方向性や目標を明確にしながらステップを踏む必要があります。ここでは、自社状況の確認と導入段階のサポート活用について考察します。
自社状況の棚卸しとツール選定を丁寧に行う
MAツールを導入するにあたっては、まず自社の現状を正確に把握することが欠かせません。具体的には、既存のリード数やサイト訪問数、コンテンツ量など、マーケティング資産を棚卸しし、現時点で抱えている課題や改善すべきプロセスを洗い出します。
そのうえで、MAツール各社の特徴やサポート体制、費用感などを比較検討し、自社に合ったものを慎重に選ぶことが大切です。
導入フェーズでの手厚いサポート活用が鍵
運用を円滑に始めるには、ツールベンダー側が用意している導入サポートやオンボーディングプログラムを積極的に活用しましょう。初期設定やシナリオ構築、担当者向けの操作トレーニングなどを受けることで、社内への周知と知識共有がスムーズに進みます。
特に操作面やシナリオ設計に不安がある場合は、カスタマーサクセス専任の窓口やコンサルティングサービスの有無を導入前にしっかり確認すると良いでしょう。サポート体制をうまく活かすことで、導入初期の失敗リスクを下げられます。
マーケティングオートメーション失敗を防ぐ成功ステップ

ここまで失敗要因となるポイントを見てきましたが、具体的にどう進めれば失敗を防げるかをステップで整理します。導入前と後で取るべきアクションが異なるので、それぞれ把握することが大切です。具体的なポイントを押さえて安定した運用を実現しましょう。
導入前
まずは社内でMA導入のゴールを共有し、達成したい数値目標(KGI・KPI)を具体的に定めましょう。そのうえで、運用に必要なリソース(コンテンツ担当、設定担当、営業連携など)を確保し、初期段階のシナリオをざっくり組んでおきます。ここでは営業部門やカスタマーサポート部門との連携方式を明確に決めておくことが重要です。
導入後
導入後はいきなり全部の機能を使い倒すのではなく、優先度の高いところから小さく実験するのが鉄則です。
たとえば一部のターゲットセグメントだけを対象にメール配信を自動化して効果測定を行い、成果が見えたら他のセグメントにも展開するといったアプローチで、運用担当者の負担を軽減できます。定期的にデータをモニタリングし、発見した課題を次の施策に反映するPDCAを回すことで、MAの真価を徐々に引き出していくことが可能です。
まとめ
マーケティングオートメーションは多大なメリットをもたらす一方、事前準備や運用体制次第で失敗するリスクも存在します。「Beerfroth(ビアフロス)」では、営業フレームワークをサポートしMA・CRM・SFAの機能を組み合わせたクラウドサービスを提供しています。貴社営業を強化するために、お気軽にお問い合わせください。